2007年 06月 10日
実は陶胎染付を本やネットなどで調べると、「ひび焼き」などという、陶器質の土を使って、表面に白化粧土を塗った、もっと高級な雰囲気のものが出てきます。それに対して、海岸や川でよく出会うこれは、佐世保市の江永窯などで焼かれた、雰囲気が「くらわんか」そのもので、色がうんと黒い素朴な器です。陶片を集め始めた頃に陶胎染付だと教えてもらったのですが、あまり「ひび焼き」ばかり出てくるので不安になりました。でも「九州陶磁の編年」(2000年2月、九州近世陶磁学会発行)などを見ると、やはりこのタイプの器に陶胎とあります。それによると、おもに18世紀前半、佐世保市の江永窯やすぐ近くの長崎県波佐見町の窯などで焼かれたそうです。白化粧土は塗られていませんが、確かに染付の模様もあります。海岸でけっこう出てくる割には、この時期に作られた他の肥前系陶磁に比べて情報が少ない器です。拾ったものを見ると、碗が圧倒的に多いようです。たまに火入が出てくることもあります。 ところで、この陶胎染付については、別のことでも長い間悩んできました。くらわんか茶碗の中には、これは磁器なのか、陶胎染付なのか、ほんとうに悩んでしまうシロモノがあったからです。断面が濃灰色~灰色で表面も灰色の、どう見ても陶胎染付だと思える、ここで取り上げたようなもの、色が白くて生地も緻密な、あきらかに磁器だと言えるもの、そして、どちらだろうと悩むような、薄灰色や薄茶色のもの、海岸で出てくるくらわんか茶碗の質感は様々で、くらわんかの器には明確な線引きなどなさそうな感じでした。そして、そのとおりだったのです。くらわんかのような雑器は、陶石からできた磁器の原料と、粘土からできた陶器の原料を混ぜて焼いたりしたらしいのです。磁器の原料が不足がちだったからだそうですが、それにしても実に大らかな作り方でした。
by hikidasi1
| 2007-06-10 09:22
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