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陶片窟の引き出し

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2007年 07月 13日

陶製の缶詰・「防衛食」

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                     防衛食容器(骨董市で購入したもの)

 防衛食とは、非常用食糧として作られた缶詰です。金属の不足を補うため陶製でした。どの容器にも胴体の部分に大日本防空食糧株式会社 社長 小澤専七郎 謹製 という文字が入ります。
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 骨董市で購入した容器の内側と底です。底には統制番号「有115」の他、「防15」の文字が入っています。

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                       防衛食容器の蓋(宮島)

 初めて私が拾った防衛食容器がこれでした。陶片を拾い始めた頃で、何かわからないけれども、素っ気ない灰色の地に数字と、~容器などとわざわざ書いてあるのがどことなく異様で、大久野島で見た毒ガス工場の陶片を思い出し、何か物騒なものではないかと胸騒ぎがしたものでした。

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                 (似島、宮島、八幡川)

 その後、缶詰容器の代用品とわかり、特に似島からはたくさん見つかりました。ほとんどデザインも同じですので、小さな破片でもあれば必ずそれとわかります。

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 真空状態の容器を開けるには、蓋に釘などで穴をあける必要がありました。この八幡川で拾った蓋にはうまく穴が開いていますが、蓋そのものが割れることもあったのではと思います。拾ったものの中には穴が開いていないものもあり、粗悪品で蓋が勝手に取れたか、本体の方が先に割れてしまったのかもしれません。

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 防衛食、大日本防空食糧株式会社 社長 小澤専七郎 謹製の文字入り(似島)

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 缶詰容器ですから、普通は中に釉薬が掛かっていますが(写真上)、たまに無釉のものも幾つか見つかっています(写真下)。何もかも節約の時代でしたが、それにしてもこれでは中の水分が染み込んだのではと思います。

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 底の部分とその内側です。海岸では防衛食容器もバラバラになって出てきます。蓋や胴体なら特徴がはっきりしていて、それとわかるのですが、底だけが出てきたときは困りました。この底を拾った頃、私が有田の資料館などで見て知っていたのは、骨董市で購入したのと同じタイプの底でした。どうも防衛食っぽいとは思っても、これも防衛食なのかどうか今一つ自信がありませんでした。ところが意外にも広島市の郷土資料館でこれが防衛食容器であることを確認することができました。同じ底を持つ防衛食容器があったのです。そういえばこの郷土資料館は戦前、宇品陸軍糧秣支廠で、軍隊のための缶詰を作っていました。なるほど、灯台下暗しだったわけです。

by hikidasi1 | 2007-07-13 22:15


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