人気ブログランキング | 話題のタグを見る

陶片窟の引き出し

hikidasi1.exblog.jp
ブログトップ
2008年 10月 28日

くらわんか茶碗との出会い

くらわんか茶碗との出会い_d0123263_1072387.jpg
くらわんか茶碗との出会い_d0123263_1073735.jpg
 丸の中に簡単な模様を入れた、このデザインは代表的なくらわんか茶碗の模様の一つで、海岸でも時々出てきます。18世紀のものです。これは1996年の7月、私が最初に拾った江戸陶片の一つです。「漂着物事典」(石井忠著)に載っていた、くらわんか茶碗についての説明と、宮島で古い陶片が出るという、広島の情報誌の記事と写真を頼りに私は宮島へ行きました。断面が分厚くて、五弁花という花のような模様がある。それが知っていることのすべてでした。もしもこの日、干潟に出てきた陶片が、これよりも50年時代が古ければ、それが古いものだと私にはわからなかったでしょう。まだまだ磁器食器が普及する前の贅沢品は薄くて、絵も丁寧で、知らないと最近の新しいものに見えてしまうからです。もしも50年新しくても、やはり私は古いものだとわからなかったと思います。現代の器に似てくるからです。おまけに、この陶片の厚みを見てください。くらわんか茶碗は分厚いことが多いですが、ここまで分厚いのは珍しいです。五弁花だって皿には多いのですが、碗の場合は実は比較的少ないのです。これだけ特徴が揃っていても、当時の私は、この陶片がきれい過ぎるような気がしました。模様もモダン過ぎるような気がして幾らか不安でしたが、干潟の泥から拾い上げた陶片はずっしりと手に重くてタダモノではなく、これが江戸時代の重さなのだと、心に染み入るようなうれしさを感じました。

by hikidasi1 | 2008-10-28 10:47


<< 網目模様のくらわんか茶碗      幕末の大皿 >>