陶片窟の引き出し

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2007年 06月 22日

昭和のゴム印・復古調

 江戸時代から陶磁器に繰り返し描かれた唐草や網目などの伝統的な文様は、近代になっても、手描きから、型紙摺り、銅版転写、ゴム印へと、絵付け方法は変化しながらも連綿と受け継がれてきましたが、特に昭和になって懐古趣味と言ってもいいほど、伊万里の染付の古い文様が量産食器の世界で復活するようです。明治、大正時代の型紙摺りや銅版転写の食器が、古い伝統を体内に十分持ちながら、それは空気のような存在で、心の方はどこか新しい時代、モダンなデザインへと向いているようなのに対して、江戸時代の食器から最もかけ離れた姿をした昭和の食器に、明らかに古伊万里を意識したデザインが多くなるのはおもしろいと思います。
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                    レトロな文様のゴム印食器(似島、鞆など)

上の写真は、牡丹唐草や菊唐草、網目模様など伝統的な文様のゴム印食器たちです。上段中央の竜の文様の器は、江戸時代の器によくあるように、高台内に福の字が印刷されています。右端の陶片の小さな東屋と松の木の下に描かれた歪んだ楕円の輪は、なんと太湖石のようです。太湖石とは、中国の江蘇省の太湖で取れる水の浸食によってできた奇岩で、庭石などに使われました。この岩が中国陶磁の影響で、伊万里の染付にも描かれ、鍋島の皿などに丁寧に描かれましたが、時代が下がるにつれて、簡略化され、ついにはドーナツのように丸い輪に近い、元の姿を知らなければ何を描いたのかわからないモノと化していきます。その太湖石の成れの果てがゴム印で描かれています。

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                         ゴム印の五弁花(似島)

 器の中央に五弁の花をたった一つ描くデザインは江戸時代に大流行しましたが、その反動か、近代になると滅多に見られなくなりますが、これも昭和のゴム印タイプの小皿に復活します。

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                 ゴム印皿と、その高台内の大明清化年製?の銘

 江戸時代、中国陶磁への憧れからか、日本製でありながら、高台内に大明年製、大明成化年製などと書かれたものがありましたが、ゴム印皿にもあるんです。ただし、よく見ると大明清化・・・となっています。(^^ゞ 買った人のほとんどは意味など解らなかったでしょうに、それでも昭和のお皿にまで書かれているのがおもしろいですね。ちなみにお皿の外側に飛んでいるのは、たぶんコウモリではないかと思うのですが、これは買った人にとって、もしかしたら知らぬが仏だったかもしれませんね。

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                     東陽軒平八製の飯茶碗(似島、宮島)

伝統的なデザインのゴム印食器の中には、高台内に東陽軒平八製の銘を持ったものがときどき見つかります。詳しいことはよくわからないのですが、私が拾ったものは今のところ、飯茶碗ばかりです。
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by hikidasi1 | 2007-06-22 21:44


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